私達が生きていく上で、契約は様々なところで発生します。しかし、後から冷静に考えてみると不要だったと思えるものもあります。特に「事業者の突然の訪問」や「電話での勧誘」など「事業者の不意打ち的な勧誘によって、消費者が冷静な判断ができない状態で結んでしまった契約」にありがちです。

一定条件はありますが、特定の販売形態により結んだ契約は、消費者が一方的に、無条件で、申込撤回や契約解除をすることができます。それがクーリング・オフです。

この記事ではクーリング・オフのやり方について解説していきます。

クーリング・オフの詳細については下記の記事をご覧ください。

消費者トラブル関連 クーリング・オフって何?

クーリング・オフを行うために必要な物

クーリング・オフを行うためには「いつ?誰と誰が?どのような内容の契約をしたのか?」の情報が必要です。

その情報は、事業者から受け取った法定書面(申込書面や契約書面)に記載されていますので、まずはこの法定書面や契約時に業者から渡された物(名刺や覚書のような書面など)を探し、手元に準備します。

悪質なケースの場合は、警察へ相談する可能性もありますので、法定書面や名刺などは証拠となる可能性もあります。

クーリング・オフを行う

クーリング・オフは法律上「申込者等は、書面又は電磁的記録により、申込みの撤回等を行うことができる」(特定商取引法 第9条)と定められています。

様々な書籍やサイトでは「ハガキ」、「特定記録郵便」、「簡易書留」、「メール」でのクーリング・オフの通知を示唆していますが、当事務所は「内容証明郵便」での通知をお勧めします。

通知書に記載する内容(例)

  • 契約日(いつ?)
  • 契約者や販売担当者(誰と誰が?)
  • 契約内容(商品名、販売金額 など)
  • 申込みを撤回もしくは契約を解除する旨
  • 既に支払った金銭があれば、返金を求める旨
  • 既に引き渡された商品等があれば、商品を引き取ってもらう旨

相手が善良な業者であればハガキなどでの通知でも良いかもしれませんが、悪質業者であれば「そんな通知は届いていない」などの主張をされる場合もあります。

注意点

以下、クーリング・オフの行う際の注意点です。

クーリング・オフができる状況か確認

クーリング・オフは、特定の「取引形態」で業者と結んだ契約である事。そして、法定書面(申込書面や契約書面)を受け取ってから一定の期間内に、クーリング・オフの通知を行う事です。

クーリング・オフができる取引形態

  • 訪問販売
  • 電話勧誘販売
  • 特定継続的役務提供
  • 訪問購入
  • 連鎖販売取引
  • 業務提供誘引販売取引

各取引形態の詳細は、下記の記事をご覧ください。

取引形態(累計)|クーリング・オフって何?

クーリング・オフができる期間

法定書面(申込書面や契約書面)を受け取ってから8日以内(「連鎖販売取引」と「業務提供誘引販売取引」は20日以内)です。なお、法定書面を受け取った初日を1日目と数えます。ご注意ください。

この8日以内(もしくは20日以内)に、クーリング・オフを行う旨を記載した書面を発送する必要があります。(運送会社の受付日が8日以内。業者に届くのは8日を過ぎてからでも問題ありません)

8日はあっという間に過ぎます。クーリング・オフを行う必要があれば、すぐに行動される事をお勧めします。

クレジット会社を利用して代金支払いの場合

訪問販売等で事業者と結んだ契約の支払いにクレジット会社を利用している場合、注意が必要です。事業者と結んだ売買等の契約とは別に、クレジット会社と結んだ契約(お金を借りる)も存在するからです。そのため、クレジット会社へもクーリング・オフを行う旨の通知が必要です。

クレジット会社との契約は、特定商取引法ではなく割賦販売法で定める範囲になります。

割賦販売法とは?

消費者が事業者から商品を購入するなどの契約をした場合、その代金の支払いを一括払いの他に、複数回に分割して後払いする事があります。後払いの典型的なやり方としては、クレジットカードを利用した取引・支払いがあります。
クレジットカードを利用した取引・支払いは、消費者と事業者、消費者とクレジットカード会社がそれぞれ契約を結ぶ複雑な形になります。

その複雑な取引形態でも、ルールを明確化する事で、消費者を保護し、公正な割賦販売などの取引の実現を図るために作られた法律が割賦販売法です。

クレジット会社へクーリング・オフが行える主な要件

  • 信販会社と割賦販売法に基づく割賦販売契約(クレジット契約)をした事
    ※銀行で組んだローンは対象外の場合があります
  • 支払期間が一定期間あり、一定回数以上の分割払いである事
  • 支払総額が一定金額以上である事
  • 事業者と結んだ契約が特定商取引法で定めるクーリング・オフが適用される契約である事
  • 事業者に対して抗弁事由がある事

抗弁事由とは?

「注文した商品が届かない」、「届いた商品が不良品」、「契約が不成立(または解除・無効・取消しなど)」などの場合、消費者は事業者に対して代金の支払いを拒む事ができます。
この支払いを拒む事ができる事由を「抗弁事由」といいます。

そして割賦販売法では、消費者が事業者に対して抗弁事由がある場合は、消費者はクレジット会社に対しても支払いを拒む事ができます。
この権利を「抗弁の接続」(もしくは「支払い停止の抗弁」など)といいます。

クレジットには「包括クレジット」と「個別クレジット」があり、厳密にはどちらを利用しているかによって変わりますが、大事なのはクレジット会社にも申込撤回・契約解除の通知を出す事です。

まとめ

今の時代、高齢者は事業者に狙われやすい傾向にあります。もし仮に不要な契約を結んでしまっていても、8日以内であればクーリング・オフによって契約を解除することができる場合もあります。

クーリング・オフを行う必要があると気付いた場合、一刻を争う状況クーリング・オフは時間との勝負です。法定書面(申込書面や契約書面)を探し、状況をできる限り早く確認しましょう。
そして、確実に事業者に申込撤回や契約解除の通知が届き、そしてその内容を証明するためにも「内容証明郵便」での通知の発送を行う事を当事務所はお勧めします。

ご両親や地域のご高齢者を守るためにも、普段から連絡などを取っておく事が大切です。可能であれば、週1回程度は「大量のダンボールが増えてないか?不審な業者が出入りしていないか?」等の見守り体制を整える事をお勧めします。

クーリング・オフは、消費者を保護する強い制度ですが、過信は禁物です。特に悪質業者は、様々なやり方でクーリング・オフが適用されない方法で販売をしてきたり、計画的な倒産などによってクーリング・オフをしても満額返金されないケースもあります。
周囲の見守りによって不要な契約を早く見つける事も大事ですが、そもそも不要な契約を結ばないように、気軽に連絡・相談などが出来る人を作っておく事も大事です。

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