2026年12月25日に施行される『こども性暴力防止法』によって、日本版DBS制度が導入・運用される予定です。
以前の記事では、『性暴力の疑いやおそれがある場合の対応や判断基準』や『防止措置』について詳細に解説しました。
まだそちらの記事を読まれていない方は、是非お読みいただければと思っております。
今回の記事では、性暴力のおそれがあると認められる場合、対象従業者(職員)の配置転換等をする必要がありますが、その措置(防止措置)を講じるためには、就業規則の整備や、事前に誓約書等で従業者もしくは採用予定者から特定犯罪歴の有無を確認する必要があります。
今回は防止措置を行うために事業者ができる準備について、詳しく解説します。

弁護士や社会保険労務士など他士業の独占業務の内容も含まれますので、こども家庭庁が掲載している情報の紹介に留める内容もあります。ご了承ください。
当ページの情報は執筆時点の情報です。また、こども家庭庁に掲載されている資料等は、随時変わる可能性がありますので、ご注意ください。
執筆日:
参考資料等
こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁 ※2026年3月18日更新
こども性暴力防止法施行ガイドライン|こども家庭庁
(以降、当サイトでは『ガイドライン』と書きます)
事業者が事前に準備できる事
- 就業規則・服務規定等の見直し
- 誓約書の準備・見直し
- 採用募集要項の採用条件、内定通知書の見直し
今回は書類等に限って解説しますが、従業者(求職者も含む)に日本版DBS制度の趣旨・目的を説明をし、理解を深めてもらう事や、犯罪事実確認の結果(従業者が必要書類を提出しない場合も含む)によっては子どもに従事する業務に従事させられない事等の説明は必要です。
就業規則や誓約書の整備は、従業者がもし性暴力等を行った時(過去に性犯罪歴がある場合も含む)に、配置転換や解雇等の処分をするためのルールを定めておくためですが、実情を考えると、解雇という処分はなかなか行えるものではなく、解雇処分を行なったとしても裁判で無効と判断される事もあります。就業規則や誓約書は、労働審判手続きに詳しい専門家(主に弁護士さん)へご相談される事をお勧めします。
就業規則・服務規定等の見直し
- 次の内容を定めること
- 「児童対象性暴力等」(性暴力)及び「児童対象性暴力等につながる不適切な行為」(不適切な行為)の範囲
- 教育や保育を提供する場においてこれらの行為を行ってはならないこと
- これらの行為を行ったり、それを理由として刑罰を科されたりした場合は、速やかに報告すること
- 内定取消事由や試用期間に係る解約事由として、「重要な経歴の詐称」を定めること
- 懲戒事由として次の内容を定めること
- 重要な経歴の詐称
- 「刑罰法規の各規定に違反する行為が認められた場合」、「企業秩序を乱した場合」等の一般的な刑罰法規違反・企業秩序義務違反
- 「正当な理由なく、業務上の指示・命令に従わなかったとき」等の一般的な業務命令違反
- 「こども性暴力防止法上の「児童対象性暴力等」に該当する行為を行ったとき」、「児童対象性暴力等につながる不適切な行為を行ったとき」
誓約書の準備・見直し
- 特定性犯罪歴が無いことを書面にて明示的に確認
- 犯罪事実確認の結果が異なれば「重要な経歴の詐称」に該当
この「重要な経歴の詐称」がある事によって、就業規則・服務規定違反に繋がります。
採用募集要項の採用条件、内定通知書の見直し
- 採用募集要項の採用条件に、特定性犯罪歴が無いことを明示すること
- 内定通知書等に内定取消し事由として「重要な経歴の詐称」を定めて説明しておくこと
- 誓約書、履歴書等を通して、特定性犯罪前科の有無を書面等で明示的に確認すること
- 犯罪事実確認の結果が異なれば「重要な経歴の詐称」に該当
この「重要な経歴の詐称」がある事によって、内定取消しや、就業規則・服務規定違反に繋がります。
こども家庭庁が示す雛形
こども家庭庁が雛形を公開していますので、施設・事業者の方はご参考にされてください。
※各施設・事業所ごとに合わせて、記載内容を変更する必要があります
従業者が派遣労働者等の場合の留意点
従業者が派遣労働者や個人業務受託者の場合、それぞれに留意すべき点があります。
派遣労働者の場合の留意点
派遣先は、労働者派遣契約で定められた業務についての指揮命令権は有するものの、派遣労働者と雇用関係にないため、労働者派遣契約の内容を超えた勤務地・業務の変更等の措置を講じる権限は有さない。また、 請負の形態で従事する場合、発注者は、従事者に対するいかなる指揮命令権も有さない。
派遣労働者等について、児童対象性暴力等のおそれがあると認めた場合、防止措置を講じるに当たっては、次のア及びイに掲げる対応を実施することが考えられる。
ア 派遣先等において、取り得る範囲内での防止措置(労働者派遣契約で定められた範囲内での派遣労働者の業務変更(※1)、見通しが良い環境の確保等)を行うこと
イ その上で、派遣先等が派遣元等に対して、犯罪事実確認の結果そのものを伝えることは、こども性暴力防止法第12条違反となることに留意しつつ、可能な範囲(※2)で速やかに児童対象性暴力等のおそれがある事実を派遣元等に対して伝えるとともに、労働者派遣契約や請負契約等に基づき、派遣労働者の変更や、法に適合した請負として業務処理がされるような見直しを要請すること(※3)
※1
請負の場合は、発注者の判断で業務変更することはできない。
※2
「おそれ」の内容が、特定性犯罪事実該当者であった場合、犯歴情報そのものを派遣元等に伝えることは、こども性暴力防止法第12条違反となる。
※3
下記の規定をあらかじめ盛り込んだ上で、派遣先等から派遣元等に対しては、「おそれがあると認めた」ことのみ伝えつつ交代等を求めることが考えられる。
- 労働者派遣契約等に「派遣労働者について、こども性暴力防止法第6条に規定する児童対象性暴力等が行われるおそれがあると派遣先が認めたときは、派遣元事業主に対し、派遣先の選択において当該派遣労働者の変更又は当該派遣労働者の従事する業務の変更を求めることができる」旨の規定
- 請負契約等に「委託業務に従事する者について、こども性暴力防止法第6条に規定する児童対象性暴力等が行われるおそれがあると学校設置者等が認めたときは、学校設置者等は請負事業主にその旨を伝え、請負事業主は当該者に委託業務に従事させないようにしなければならない」旨の規定
個人業務受託者の場合の留意点
個人業務委託の形態で従事する場合、委託者は、従事者に対するいかなる指揮命令権も有さない。このため、個人業務受託者の場合は、業務委託に係る契約解除事由として、「こども性暴力防止法第6条に規定する児童対象性暴力等が行われるおそれがあると業務委託者が認めたこと」を盛り込んだ上で、当該条項に沿って対応することが考えられる。
共通して言える事
犯罪事実確認の結果や、性暴力(不適切な行為も含む)の疑いやおそれがあっても、契約(労働者派遣契約・請負契約・業務委託契約等)で、取決めをしていない限りは防止措置(配置転換や派遣契約終了等)を行う事ができないという事です。
契約で取決めがなく、配置転換や契約終了等の防止措置を行なうと、訴えを起こされた際に、過去の判例(裁判例)を基に、防止措置は無効と判断される可能性があります。そのため、誓約書や就業規則などの入念な整備を含めて、労働審判手続きに詳しい専門家(主に弁護士さん)へご相談される事をお勧めします。
まとめ
今回は防止措置を行うために、施設・事業者が事前に準備しておくべき事を紹介しました。
仮に性暴力等の疑いやおそれがあっても、『誓約書で特定性犯罪歴が無いことを書面にて明示的に確認』したり、『就業規則・服務規定等に解約事由や懲戒事由の定め』がなければ、不当な解雇等に該当する可能性があります。
まだ日本版DBS制度は始まる前ですが、この辺りの環境作りは前もって取組む事ができる分野だと思われます。
日本版DBS制度は難しい・複雑な事も多い仕組みですが、日本版DBS制度を通じて、子どもが安心して教育・保育等を受けられる環境づくりを目指していきましょう。
