物を売り買いする売買契約や、建物やお金などを貸し借りする賃貸借契約、就職の際には雇用契約などなど、私達は生きていく上で様々な契約を行います。
しかし近年、高級布団・シロアリ駆除・床下点検・健康食品・貴金属買取など業者が皆さんのお宅に急にお邪魔して勧誘したり、業者から急に電話がかかってきて勧誘され、契約を結ぶケースでトラブルをよく聞くようになりました。
「老後2000万円問題」などの影響もあり、高齢者は多額の預貯金や財産を保有する事が多くなりました。しかし定年退職等で在宅時間が多くなり、その在宅中に訪問販売や電話勧誘販売などを受けたり、悪質業者に狙われる事も多くあります。
人は急な判断を求められると、正しく判断ができません。後から冷静になって考えてみると「不要な物を買ってしまった」と思う事も多くあります。そんな時に契約を解除できる仕組みがクーリング・オフです。
この記事では特定商取引法で定めるクーリング・オフについて解説していきます。

クーリング・オフを定める主な法律は「特定商取引法」と「割賦販売法」があります。今回は、特定商取引法で定めるクーリング・オフについての解説です。
このページでは、これを確認します!
クーリング・オフとは?
クーリング・オフとは、消費者が事業者(業主や施工業者)と契約した後に、頭を冷やして冷静に考え直す時間を消費者に与え、一定期間内であれば、消費者が一方的に、無条件で、申込撤回や契約解除をすることができる特別な仕組みです。

クーリング・オフは、事業者の不意打ち的な勧誘によって、消費者が冷静な判断ができない状態で結んでしまった契約について、消費者に一定の再考の時間を与え、一定期間であれば無条件で申込撤回や契約解除をできる仕組みです。
クーリング・オフを行うとどうなるか?
- 消費者が支払った代金は返金
- 消費者が購入した商品は事業者の負担で返品
- 行われた工事は事業者の費用負担で原状回復
事業者は損害賠償や違約金を請求する事はできない。
(特定商取引法 第9条3項)
建物の改修工事のようなケースで、既に何らかの工事が行われており、消費者が得する場合でも、事業者は代金を請求する事はできない。
(特定商取引法 第9条5項)
クーリング・オフができる取引と期間
クーリング・オフは、消費者が無条件で申込撤回や契約解除をすることができる特別な仕組みです。クーリング・オフを行うと、消費者は完全に守る事ができますが、業者にとっては大きな痛手です。
そのため、クーリング・オフを行うためには条件があります。
取引形態(類型)
下記の6つの取引が対象です。
訪問販売
- 事業者が消費者の自宅等へ訪問し勧誘する販売方法
- 事業者が販売目的を隠して勧誘する販売方法(アポイントメントセールス)
- 事業者が店舗・営業所以外の場所で勧誘する販売方法(キャッチセールス)
例)高級布団・衣類等の販売、新聞・インターネット回線等の契約、屋根・水道水・床下等の点検、床下換気扇工事 など
電話勧誘販売
- 事業者が消費者へ電話を掛けて勧誘する販売方法
- 電子メールやSNSのDMを用いて勧誘する販売方法
例)健康食品等の販売、インターネット回線等の契約、新聞・雑誌への掲載勧誘 など
以下のようなケースも電話勧誘販売に該当します。
- 電話を切った後に、消費者が郵便・FAX等で契約を申込んだ場合
- 目的(勧誘等)を伏せたビラやパンフなどを消費者に配布し、消費者に電話を掛けさせて販売した場合
特定継続的役務提供
- 契約金額が5万円を超え、かつ契約期間が1ヶ月を超えるエステティック・美容医療の契約勧誘
- 契約金額が5万円を超え、かつ契約期間が2ヶ月を超える語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービスの契約勧誘
※家庭教師・学生塾には、幼稚園や小学校に入学するための塾は含まれません
※学生塾には、大学受験の浪人生のみを対象とする塾は含まれません
ただし、以下の物はクーリング・オフの適用対象外です。
- エステティックの際に使われた下着
- エステティック・美容医療の際に使われた化粧品・石鹸などの消耗品
- 語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室で使用された書籍
など
訪問購入
事業者が消費者の自宅等へ訪問し購入する取引
例)着物・貴金属の出張買取 など
消費者自身で事業者を呼び出した場合はクーリング・オフの適用対象外ですが、事業者の執拗な勧誘によって、本来手放すつもりが無い物まで買取りをされた場合はクーリング・オフが適用されます。
例)
着物買取りを依頼したが、事業者が「貴金属はありませんか?」と執拗に迫り、本来手放すつもりが無いネックレスや指輪などの買取りがあった場合
連鎖販売取引
個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせるという形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・権利・役務の取引
例)マルチ商法
業務提供誘引販売取引
「仕事を提供するので収入を得ることができる」、「仕事を行うために道具や知識が必要」というような口実で、商品等を販売する取引
例)内職商法、モニター商法 など
期間
重要事項が記載された法定書面(申込書面や契約書面)を受け取ってから8日以内(法定書面の受領日を1日目と数える)です。なお「連鎖販売取引」と「業務提供誘引販売取引」は20日以内です。
法定書面に記載される主な内容
- 事業者の情報(氏名、住所、電話番号など)
- 商品・役務の種類、価格、支払い方法、商品の引渡時期、役務の提供時期
- クーリング・オフの適用除外がある場合は、その情報(適用除外の商品情報 など)
- クーリング・オフに関する詳細な情報(クーリング・オフの起算日や期間 など)
取引形態によって必要な記載事項が変わります
例)
訪問販売 :特定商取引法 第4条
電話勧誘販売:特定商取引法 第18条

法定書面を受け取ってから8日のカウントダウンが始まります。
なお、法定書面を受け取っていない場合や、法定書面に不備(事業者の情報が記載されていない、購入した商品が分からない、価格が分からない など)がある場合は、この8日のカウントダウンが始まらず、契約から日数が経過していてもクーリング・オフができる場合があります。
クーリング・オフができない取引
- 法人契約(営業のために結んだ契約)や個人売買
- 海外にいる人と結んだ契約
- 国・地方公共団体等と結んだ契約
- 一定の法律(金融商品取引法・宅地建物取引法・旅行業法・弁護士法 など)による契約
※ただし、特定商取引法以外の法律等でクーリング・オフの定めがあり、可能な場合もあります - 販売条件等の交渉が一般的に長期間行われる取引(自動車販売・自動車リース など)
- 使用・消費済みの消耗品
- 3000円未満の現金取引の契約
- 消費者の意思で事業者の店舗・営業所に来店したり、消費者が事業者を自宅等に呼び出したり、消費者から事業者に電話を掛けさせて結んだ契約
- 過去一定期間内に取引があった消費者・事業者間の訪問販売や電話勧誘販売での契約
※ただし、過量販売や次々販売に該当する場合は契約解除ができる場合があります - 特定の役務(飲食店利用、電気・ガスなどの供給、葬儀 など)の契約
- 通信販売(インターネット通販・テレビショッピング・ラジオショッピング など)

クーリング・オフは、不意打ち的な勧誘によって冷静な判断ができない状態で結んでしまった契約について、消費者を保護する仕組みです。
そのため、法人間での契約や、消費者が自ら望んで店舗等に来店して行った契約、通信販売のように消費者に判断する時間的猶予があるような契約は、クーリング・オフの対象外となります。
クーリング・オフを行うためには?
クーリング・オフを行うためには、書面等で契約解除の通知を期限内に発信します。
色々な書籍やサイトでは「ハガキ」や「特定記録郵便」や「簡易書留」で通知をするとの記載を見ますが、当事務所は「内容証明郵便」をお勧めします。

クーリング・オフのやり方は、別の記事で詳しくご説明します。
まとめ
ご高齢の方の単身(もしくは夫婦2人)でお住みのようなケースでは、定期的な安否確認は大切ですが、それだけでなく余生を不自由なく暮らすための財産を守る事も大切です。
老後2000万円問題などの影響もあり、特に高齢者は事業者に狙われやすい傾向にあります。もし仮に不要な契約を結んでしまっていても、8日以内であればクーリング・オフによって契約を解除することができる場合もあります。
ご両親や地域のご高齢者を守るためにも、普段から連絡などを取っておくなどが大切です。また、実際に被害に遭っていても、その被害に気付いていなかったり、周囲に話せず泣き寝入りしているケースもあります。そのため、周囲の見守り体制を整える事をお勧めします。
