2026年12月25日に施行される『こども性暴力防止法』によって、日本版DBS制度が導入・運用される予定です。
以前の記事では、制度の導入に向けて事業者が取組む事を大まかに解説しました。
まだそちらの記事を読まれていない方は、是非お読みいただければと思っております。
今回はその中の『犯罪事実確認』について重点を絞って解説していきます。
当ページの情報は執筆時点の情報です。また、こども家庭庁に掲載されている資料等は、随時変わる可能性がありますので、ご注意ください。
執筆日:
参考資料等
こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁 ※2026年3月18日更新
こども性暴力防止法施行ガイドライン
(以降、当サイトでは『ガイドライン』と書きます)
「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議」報告書|こども家庭庁
(以降、当サイトでは『有識者会議報告書』と書きます)
このページでは、これを確認します!
DBSが導入された背景

引用元:こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁より ※2026年3月18日更新
こどもに対する性犯罪・性暴力は、 被害に遭ったこどもの心身に生涯にわたり有害な影響を及ぼす極めて悪質な行為であって、決して許してはならない。
こどもに対する教育、保育等が提供される場において、教育、保育等を提供する業務に従事する者によるこどもに対する性犯罪・性暴力は、被害に遭ったこどもの心身に生涯にわたって回復し難い有害な影響を及ぼすものであり、あってはならないことである。
有識者会議報告書の中に記されている内容ですが、まず子どもへの性犯罪・性暴力は防ぐべき事です。しかしながら近年、子どもに対する性犯罪が増加しています。
そこで、子どもが、教育・保育等の提供を受ける場で、子どもに接する仕事に従事する人による性犯罪・性暴力の被害に遭うことがないよう、未然に防止するための制度・仕組み作りが求められました。その制度・仕組み作りを考察していく中で参考になったのが、イギリスの公的機関であるDBS(Disclosure and Barring Service:前歴開示・前歴者就業制限機構)制度です。
イギリスでは、基本的に職種に関わらず使用者(経営者側)が被用者(労働者側)の犯歴照会を求めることができる事となっており、特に子どもに関わる職業や(ボランティアも含む)活動を行う使用者が、子どもに対する性的虐待等の犯罪歴がある者を使用することは犯罪と定められており、子どもに関わる職種の使用者において被用者の犯歴照会を行うことが義務化されています。
日本版DBS制度にも、イギリスのDBS制度で実施されている子どもに接する仕事に従事する人の過去の性犯罪歴を確認する仕組みが取り入れられています。それが『犯罪事実確認』です。
犯罪事実確認とは?
『犯罪事実確認』とは、子どもに接する仕事に従事する人の過去の性犯罪歴を確認する仕組みです。現職の従事者だけでなく、新規に雇い入れる場合や配置転換の際も確認が必要になります。

引用元:こども性暴力防止法について(概要)|こども家庭庁より ※2026年3月18日更新
確認するタイミング
犯罪事実確認は、一定の期限内に行う必要があります。
| 従事者の区分 | 期限 |
|---|---|
| 新規採用・配置転換時 | 内定・内示等から従事開始まで ※ただし『いとま特定』あり |
| 現職者(義務事業者の場合) | 子ども性暴力防止法施行から3年以内 |
| 現職者(認定事業者の場合) | 認定から1年以内 |
| 1度犯罪事実確認を受けた現職者 | 5年ごとに再確認 ※下記参照 |

いとま特例とは?
犯罪事実確認は、原則は子どもと接する仕事に従事開始前までに行う必要がありますが、やむを得ず間に合わない場合の特例として、子どもと接する仕事に従事後の確認が認められます。
- 急な欠員、人事異動等:従事後3ヶ月以内
- 合併・新設、国による確認の遅れ等:従事後6ヶ月以内
ただし、犯罪事実確認が済むまでは、原則的に子どもと1対1にさせない等の措置が必要です
犯罪事実確認に要する期間
| 従事者の区分 | 期限 |
|---|---|
| 日本国籍の人 | 2週間〜1ヶ月程度 |
| 外国籍の人 | 1ヶ月〜2ヶ月程度 |
確認対象の犯罪
犯罪事実確認によって確認対象の犯罪は、全ての犯罪ではありません。日本版DBS制度では『特定性犯罪』と定められた犯罪について、一定期間内の前科を確認する事になります。
特定性犯罪とは?
刑法、盗犯等防止法、児童ポルノ禁止法、性的姿態撮影等処罰法や、各都道府県が定める青少年健全育成条例や迷惑行為防止条例で定める一定の犯罪です。
特定性犯罪の例
- 不同意性交
- 不同意わいせつ
- 盗撮
- 未成年淫行
- 児童売春
- 児童ポルノ所持
- 痴漢
※こどもに対する性犯罪だけでなく、成人に対する性犯罪を含みます
どれくらい過去の前科を確認する?
| 刑罰の種類 | 前科確認期間 |
|---|---|
| 拘禁刑判決を受けた人 (実刑判決) | 刑の執行終了から20年間 |
| 執行猶予付き判決を受けた人 | 裁判確定日から10年間 |
| 罰金刑判決を受けた人 | 刑の執行終了から5年間 |
前科を確認する期間は、刑法第34条の2(刑の消滅)で定められた期間よりも長く設定されています。それは日本版DBS制度が、子どもが安心して教育・保育・指導・支援等を受けられる環境づくりを目的とされており、下記の点が考慮されているためです。
- 性暴力は子どもの生涯にわたって影響を及ぼし得る行為である事
- 統計的に性犯罪の再犯率が高い事
確認対象の施設・事業者
下記の施設・事業者は、犯罪事実確認を必ず実施する必要があります。
- 義務対象事業者(日本版DBS制度開始後は法定事業者)
- 認定事業者(認定を受けた認定対象事業者)
公立・私立、法人・個人、事業名、業態を問わず、法定事業者と認定事業者は犯罪事実確認を実施しなければなりません。
義務対象事業者・認定対象事業者や、法定事業者・認定事業者の違いは、下記の記事で詳しく記載しております。そちらをご覧ください。
確認対象の職種(従業員)
犯罪事実確認は、全ての従業員が一律に対象となるわけではありません。従業員がどのような業務に従事しているかによって判断されます。
重要なのは以下の3要素です。3要素全てを満たす方が対象です。
- 支配性
こどもを指導するなどし、非対称の力関係があるなかで支配的・優越的立場に立つこと - 継続性
時間単位のものを含めてこどもと生活を共にするなどして、こどもに対して継続的に密接な人間関係を持つこと - 閉鎖性
親等の監視が届かない状況の下で預かり、養護等をするものであり、他者の目に触れにくい状況を作り出すことが容易であること
雇用形態(正社員・派遣社員・パート・アルバイト)の違い、雇用契約の有無(業務委託やボランティアも含む)、雇用期間(無期・短期等)は関係ありません
一律に犯罪事実確認の対象となる従業員の例
- 学校・幼稚園の先生
- 保育士
実態に応じて犯罪事実確認の対象か現場で判断する従業員の例
- 事務職員、受付業務員
- 送迎バスの運転手
- 清掃員、警備員
- ソーシャルワーカー
- 医師・看護師等

具体的な判断の解説は、別の記事で詳細に説明を行う予定です。
従業員や雇用予定の方の性犯罪歴があった場合の対応は、別記事「導入に向けて事業者が取組む事は?-防止措置編-」で行う予定です。
まとめ
今回はガイドラインや有識者会議報告書などに基づき、犯罪事実確認の必要性や、犯罪事実確認の行うタイミング・対象者などを解説しました。
今回のポイントをまとめると、下記のようになります。
- 犯罪事実確認は、事業者が『こども家庭庁』に申請し、従業員の性犯罪歴を確認すること
- 法定事業者と認定事業者は、公立・私立、法人・個人、事業名、業態を問わず、犯罪事実確認を実施する必要があります
- 犯罪事実確認は、一定期間内に行う必要があります。また、1度確認済でも、定期的に行う必要があります
- 犯罪事実確認の対象職種(従業員)は、雇用形態や、雇用契約の有無、雇用期間を問いません
※正社員・派遣社員・パート・アルバイト、業務委託、ボランティア、有期雇用等は関係ありません
特にこの『犯罪事実確認』は、日本版DBSの根幹とも言える部分です。難しい・複雑な事も多い仕組みですが、日本版DBSを通じて、子どもが安心して教育・保育等を受けられる環境づくりを目指していきましょう。
当事務所では、出来る限り最新の情報・資料を基に情報提供を行い、事業者さんが安心して新しい制度を運用できるようにサポートをしていきたいと考えております。
